朝刊に詩人の工藤直子の作品が掲載されていた。工藤が山口県の小学校で「オーサー・ビジット」をした。掲載されたのは『てつがくのライオン』所収の「葬式」という詩。子供たちはきっと違った感性で受け止めたんだろうなあ。
…
骨はきっちり壺におさまった。
父さん
あなたの持っていた思い出は
どうなるのだろうね
竿に伝わる魚の重みや
小さな孫を抱いた手のひらの感触は
どこへいってしまうのだろうね
最後にあなたをみたとき
胸の上で組んだ指に
少年のころの傷あとが
そのまま残っていたのだが
これだけの引用にかかるエネルギーはわずかだ。けれども、このわずかな文字の配列が放つエネルギーはすごい。言葉のもつ力を信じることのできる幸福な瞬間だ。職業としての詩人が成り立つ不思議も妙に納得。