どこがいいのか、何やら分かったようで分からない作品だ。この分からなさゆえに現在まで生き延びたような気がするのだがどうだろう。「騎兵隊=善玉、インディアン=悪玉」の図式が不明瞭だったがゆえに厳しい非難を浴びなかったということだ。
しかしながら、今でこそけしからぬ騎兵隊の横暴であるが当時としてはごく当然な社会通念であったはずだ。この作品でもそんな事実が見て取れる。 たとえば、ラスト間近でジョン・ウェインがインディアンの酋長と直接対話するシーン。ここで酋長にまるで痴呆のような大仰で、威厳も何もない薄っぺらな演出を施す必要があったのか。思わず憤慨してしまった。 ジョン・フォードの騎兵隊シリーズ第2弾ということで、彼はストーリーを描くより時代の雰囲気を描くことに注力したらしい。 ぼくに言わせて見れば、合衆国の建国神話を正当化するのに加担しているだけだ。雰囲気を描くと称して巧妙に非難をかわしながら、建国の物語を善悪の彼方に位置づける作業に他ならない。ここでジョン・ウェインが体制の提灯持ちをしているのが興味深い。 結局、歴史というのは支配者のものだ。個々の事実なんてどうでもよく、神話化によって歴史は正当化され、人々に受け入れられる。 この作品は、「歴史に残らない無名の兵士によって、合衆国は建設された」などという騎兵隊賛歌のナレーションで締め括っているのだが、この辺りの無神経さがどうにも我慢ならない。単に時代が古いだけでは済まされないような傲慢さが露呈している。アメリカ人の深部を垣間見たようで気分が悪い。 黄色いリボン ★★★ 製作:1949年アメリカ 監督:ジョン・フォード 原作:ジェイムズ・ウォーナー・ベラ 脚本:フランク・S.ニュージェント、ローレンス・スターリングス 撮影:ウィントン・C.ホーク 音楽:リチャード・ヘイゲマン 出演:ジョン・ウェイン、ジョーン・ドルー、ジョン・エイガー、ベン・ジョンソン、ハリー・ケリー・Jr.、ヴィクター・マクラグレン、ミルドレッド・ナトウィック
by Yasuo_Ohno
| 2005-02-27 19:16
| シネマンガ研究会
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