私の「戦争論」(吉本隆明)

小林よしのり『戦争論』を批判する、と題した第一章。

…僕は戦争中は天皇制軍国主義にイカれていて、戦争を肯定していた……時代が変わると左翼が右翼になり、右翼が左翼になる。ボタンを付け替えるように、簡単に変わっちゃう…なぜ、そうなるのか?

…石川啄木…左翼系の文学者たちは啄木を非常に高く評価…「プロレタリア文学の先駆」といういい方で。でも、そういう紋切り型の評価はダメなんですよ。



なぜダメかというと、そういう評価をしちゃうと…人間関係の錯綜とか悩みとか、一見、小さなことのように見える情緒の大切さを見据える視点が、スッポリ抜け落ちちゃうからなんです…

…戦後、僕が反省した点…日常生活のうち、人間は大部分は、そういう小さな喜びや小さな悩みの中で生きているのだということを忘れずに、その上で、戦争・平和・政治制度・社会といった“大問題”を考えるべきである…

…市民社会のほうが国家や公より大きいんだという観点をちゃんと持ちえて、その観点に立っていうなら、市民社会で生活している個人のほうが国家や公よりも大切で、大きいんだと考えるほうが、まっとう…小林よしのりの観点で危ないなと思うのは、そこです。エゴイズムを反省するのはいいんだけど、ウカウカ反省しちゃうと、市民社会における日常生活の悩みとか、人間関係の葛藤とかが全部抜け落ちちゃうんです…

本書は、1999年に刊行されたものを2002年に筑摩書房が文庫化したもの。1924年生まれの吉本が75歳のときのインタビュー。聞き手の田近伸和が非常にいい。
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by Yasuo_Ohno | 2005-09-02 22:31 | テーマ1:保守・右翼
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