人気ブログランキング | 話題のタグを見る

隣の成果主義 その2

溝上憲文「隣の成果主義」(光文社)読了。

まず、本書で総賃金抑制が成果主義導入の動機だということが説得的に論証されている。

経営者が従業員に向かって、率直に述べるべきことが、こういうメディアを通じて伝わることが耐え難い陵辱だ。経営者の弱点を狙うコンサルタントと経営者、官僚主義の人事部の談合も聞くに堪えない。

元来、金は必要条件であって、十分条件でない。「虚妄の成果主義」の高橋伸夫・東大教授のいっていることはこのことであって、溝上はやや誤解している。これに対する反論が中途半端なFA制度や社内公募制度であっては説得力がない。

高橋の主張を容れておきながら、現実は現実なんだから受け入れなければならないといわれてもねえ。しかも米国と日本の労働力の流動性が違う。よって、終身雇用を保障すべきといわんばかりにキヤノン独自の「成果主義」をラストにもってくる。これでは自己の立場が不明瞭になる。

とはいえ意欲作には違いない。この分野の嚆矢だ。いったい読者をどこまで引っ張ってくれるのか、論旨の展開がスリリングでさえあった。しかしながら、最後は少々腰砕けになる。説得的に批判できない「虚妄の成果主義」を持ち出した時点で終わりだったともいえる。

本書の続編として、溝上と高橋の対談を心より期待したい。
by Yasuo_Ohno | 2004-12-11 12:13 | 読書の部屋
<< セントラル・ステーション 「立憲主義」自民を包囲/衆・参... >>