パゾリーニというとホモセクシャルをまず思い出す。おまけに無神論者である。そんな奇才が作ったキリスト映画である。
相手がキリストだと人物が大きすぎてかえって扱いにくい面があろう。つまり、神話に包まれていて全貌が見えない。 パゾリーニは極めて史実に忠実たろうとしたが、そこは相手がキリストなので、奇跡は避けられない。キリスト=奇跡の人であって、奇跡のないキリストなんて…であるからして、仕方ないことかもしれない。 映画はいとも簡単にキリストの奇跡を再現する。しかし、無理に映像化したときのいかがわしさとか薄っぺらさは「やらせ」に通じるものがあり、興ざめだ。けれども、奇跡を固く信じているひとには違った風に受け止められるかもしれない。 いわゆる信者はこのような映画を見てどのような反応を示すのだろう。 ぼくは奇跡を受け入れる信者の気持ちがわからなかったし、いまもわからないが、この作品のように奇跡が鮮やかに再現されたのを見て、彼らがどのように反応するのかを是非知りたい。もっともパゾリーニのひととなりについては伏せておかねばならないだろうけど。 クライマックスの弟子たちの行動が涙なしでは見られない。あれは誰だったか、キリストがいう「躓き」が現実のものとなり泣き崩れるシーンは直視できなかった。ユダの苦悩に歪む表情も圧巻だった。 キリストの人生そのものがひとの胸を打つものであり、そのエンディングは誰もが知っている。だが、パゾリーニの過剰な演出を抑え、史実に即して再構成したストーリーのラストがどのように描かれるのかは誰しも興味を抱くところだ。 結果はパーフェクト。傑作である。 とっても意地悪だけれど傑作であるからこそキリスト教信者の反応がますます知りたいものだ。ホモにして、無神論者のキリスト教映画を見て、キリスト者は何を思うのか。彼らはきっとキリストをほめたたえ、崇めるにちがいない。 逆説である。パゾリーニの真の意図はどこにあるのか。この逆説は謎めいていて興味が尽きない。名づけて「パゾリーニの逆説」と呼ぼう!! 奇跡の丘 ★★★★ 製作:1964年イタリア・フランス 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ 脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ 撮影:トニーノ・デッリ・コッリ 音楽:ルイス・バカロフ 出演:エンリケ・イラソキ、スザンナ・パゾリーニ、ニネット・ダヴォリ
by Yasuo_Ohno
| 2005-02-24 22:28
| シネマンガ研究会
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